■■ 解説(1項) ■■(»全体表示)
(1)解釈
(1.1)「侵害の停止又は予防を請求すること」
特許権や専用実施権の侵害となる行為をしないこと(いわゆる不作為の給付)を請求することである。
【補足1】停止と予防を区別する必要はなく、差止請求訴訟においては、いずれを請求する場合も、「被告は、・・・・してはならない」と請求すればよい。
【補足2】差止請求訴訟は、損害賠償請求訴訟や不当利得返還請求訴訟と併合して提起することができる。なお、迅速を要する場合は、本訴とは別に民事保全法による仮処分命令の申立てをすることができるが、本訴で敗訴した場合のための担保の供託が必要である。
【補足3】差止請求訴訟で勝訴すれば、民事執行法による強制執行の申立てをすることができる。なお、不作為の給付であるので、間接強制(履行の遅延に応じて相当の金銭の支払いを課すことによって自発的な履行を促すこと)による強制執行となる。
【補足4】特許権や専用実施権を侵害しておらず侵害するおそれもないのに特許権者や専用実施権者から差止請求をされた者は、自己に対する差止請求権が発生していないことを確定させるために、差止請求権不存在確認訴訟を提起することができる。また、そのような差止請求が著しく相当性を欠くものである場合(例えば、差止請求権が発生していないことを知っていた場合や容易に知ることができた場合)は、不法行為となるので、それによる損害の賠償を請求することもできる(»判例)。
【補足5】特許権や専用実施権の侵害を教唆や幇助する者に対しては、差止請求をすることはできない(»判例1、判例2、判例3、判例4)。また、特許権や専用実施権を侵害する者や侵害するおそれがある者であっても、公益的な理由から差止請求をすることができない場合もある(»判例)。