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(1)概要

 条は、特許を受ける権利を有しない者が特許を受ける権利を有する者に先んじて特許出願をして特許を受けた場合や特許を受ける権利の共有者が他の共有者と共同することなく特許出願をして特許を受けた場合の特許権の取戻請求権について規定したものである

(2)趣旨

 不当利得返還請求権»民法703条)のように返還を請求できるようにして救済しないと苛酷だからである

 補足1特許を受ける権利を有しない者が特許を受ける権利を有する者に先んじて特許出願(いわゆる冒認出願)をして、冒認出願の拒絶理由が看過されて特許を受けた場合や、特許を受ける権利の共有者が他の共有者と共同することなく特許出願をして、共同出願違反の拒絶理由が看過されて特許を受けた場合は、無効理由を有する特許権は利得とはいえないので、不当利得返還請求権によって返還を請求することはできない

 補足2冒認出願による特許権に対して取戻請求権の行使が必要となるのは、自らも冒認出願に遅れて特許出願をした場合であって冒認出願にはない拒絶理由(例えば、新規性や進歩性の喪失、実施可能要件違反)によって特許を受けることができなかった場合である。なお、特許を受けることができた場合は、冒認出願による特許権に対して特許無効審判を請求して消滅させればよい。

 補足3特許を受ける権利を有しない者が特許を受ける権利を有する者に先んじて実用新案登録出願をして実用新案登録を受けた場合や特許を受ける権利の共有者が他の共有者と共同することなく実用新案登録出願をして実用新案登録を受けた場合の実用新案権の取戻請求権については、実用新案法に規定がある»実用新案法7条の2