■■ 解説(1項)■■(»全体表示)
(1)解釈
(1.1)「他の国際調査機関」
欧州特許庁やシンガポール知的財産庁である。 【補足】国際調査を管轄する国際調査機関について、受理官庁である日本の特許庁は、日本語による国際出願にあっては日本の特許庁とし、英語による国際出願にあっては日本の特許庁、欧州特許庁、シンガポール知的財産庁のいずれかを出願人が選択できる(願書に記載する)こととしている(»PCT規則35.2)。 |
(1.2)「国際調査」
請求の範囲に記載された発明の先行技術調査である(»PCT15条)。 【補足】先行技術調査は、同一や類似の技術分野に属する技術について、書面による開示(国際出願日と同日以後の開示でもよい)を手掛かりとして、次のものを対象に行われる(»PCT規則33.1、同33.2)。 |
(1.2)「国際調査報告」
国際調査の結果その他の事項を記載した報告書である(»国際出願法施行規則40条)。 |
(2)その他
(2.1)国際調査機関の見解書
国際調査においては、国際調査報告の作成や国際調査報告を作成しない旨の決定をするほかに、国際予備審査を国際調査と同時に開始した場合であって国際調査機関の見解が肯定的なものとなる場合(この場合は、直ちに国際予備審査報告が作成される)を除き、(手数料の納付のあった発明に係る部分について)次のこと(国際調査機関の見解)を記載した国際調査機関の見解書の作成もされる(»国際出願法施行規則40条の2、同40条の3)。 【補足1】新規性、進歩性、産業上の利用可能性の有無は、国際予備審査と同様の基準によって判断される(»PCT規則43の2.1(b)、第13条1号)。 【補足2】国際調査報告と国際調査機関の見解書は、国際出願の調査用写しの受領日から3月と優先日から9月のいずれか遅く満了する期間内に作成され(»PCT規則42.1)、国際事務局と出願人に送付される(»国際出願法施行規則41条1項)。 【補足3】国際調査機関の見解が否定的なものであれば、次の書面を提出して反論することができる。なお、国際予備審査の請求がされない場合は、国際事務局によって国際調査機関の見解書と同一の内容の「特許性に関する国際予備報告(特許協力条約第一章)」が作成されて出願人に送付されるとともに指定官庁に送達される(»PCT規則44の2.1、同44の2.2)が、指定国の国内段階において異なる判断をすることは妨げられない(»PCT規則43の2.1(b)−PCT33条(5))。 【補足4】国際調査機関の見解が否定的なものであれば、次のように国際段階において明細書、請求の範囲、図面を補正することができる。なお、指定国の国内段階においても補正の機会は保証されている(»PCT28条)。 |
(2.2)補充国際調査
国際調査(いわゆる主国際調査)は出願人による請求を要さずに行われるものであるが、出願人は、さらに別の国際調査機関による国際調査(補充国際調査)を請求することができる。補充国際調査を管轄する国際調査機関(補充国際調査機関)は、すべての受理官庁に共通であるが、すべての国際調査機関が補充国際調査機関になっているわけではない(例えば、欧州特許庁、シンガポール知的財産庁、ロシア特許庁は補充国際調査機関になっているが、日本の特許庁、米国特許商標庁、中国特許庁、韓国特許庁は補充国際調査機関になっていない)。補充国際調査の請求は、優先日から22月以内に補充国際調査機関(複数でも可)を指定して国際事務局に対して行わなければならず、国際出願が補充国際調査機関の認める言語によるものでなければ翻訳文が必要となる(»PCT規則45の2.1)。なお、補充国際調査機関の見解書は作成されない(規定がない)。 |