解説(1項■■»全体表示

(1)解釈

(1.他の国際調査機関

 欧州特許庁やシンガポール知的財産庁である

 補足国際調査を管轄する国際調査機関について、受理官庁である日本の特許庁は、日本語による国際出願にあっては日本の特許庁とし、英語による国際出願にあっては日本の特許庁、欧州特許庁、シンガポール知的財産庁のいずれかを出願人が選択できる(願書に記載する)こととしている»PCT規則5.2

(1.国際調査

 請求の範囲に記載された発明の先行技術調査である»PCT5条

 補足先行技術調査は、同一や類似の技術分野に属する技術について、書面による開示(国際出願日と同日以後の開示でもよい)を手掛かりとして、次のものを対象に行われる»PCT規則3.1、同3.2
 @国際出願日より前に世界のいずれかの場所において公衆が利用できるようになった技術のうち新規性や進歩性の有無の判断に役立ち得るもの
 A国際出願日と同日以後に公表された出願や特許のうち出願日(優先権の主張を伴うものにあっては、優先日)が国際出願日より前のもの(いわゆる未公開先願)

(1.国際調査報告

 国際調査の結果その他の事項を記載した報告書である»国際出願法施行規則0条

(2)その他

(2.1)国際調査機関の見解書

 国際調査においては、国際調査報告の作成や国際調査報告を作成しない旨の決定をするほかに、国際予備審査を国際調査と同時に開始した場合であって国際調査機関の見解が肯定的なものとなる場合(この場合は、直ちに国際予備審査報告が作成される)を除き(手数料の納付のあった発明に係る部分について)次のこと(国際調査機関の見解)を記載した国際調査機関の見解書の作成もされる»国際出願法施行規則0条の2、同0条の3
 @請求の範囲に記載された発明の
新規性、進歩性、産業上の利用可能性の有無の見解
 A全部の請求の範囲が次のものに該当する場合にあっては、その旨
 a.国際調査をすることを要しないもの
»国際出願法施行規則2条)を内容とするもの
 b.明細書、請求の範囲、図面の記載が不明確であったり、請求の範囲が明細書による十分な裏付けを欠いているため、上記@の見解を示すことができないもの
 B一部の請求の範囲が上記Aのaやbに該当する場合にあっては、その旨と残りの請求の範囲についての上記@の見解

 補足1新規性、進歩性、産業上の利用可能性の有無は、国際予備審査と同様の基準によって判断される»PCT規則3の2.(b3条1号

 補足2国際調査報告と国際調査機関の見解書は、国際出願の調査用写しの受領日から3月と優先日から9月のいずれか遅く満了する期間内に作成され»PCT規則2.1、国際事務局と出願人に送付される»国際出願法施行規則1条1項

 補足3国際調査機関の見解が否定的なものであれば、次の書面を提出して反論することができる。なお、国際予備審査の請求がされない場合は、国際事務局によって国際調査機関の見解書と同一の内容の「特許性に関する国際予備報告(特許協力条約第一章」が作成されて出願人に送付されるとともに指定官庁に送達される(»PCT規則4の2.1、同4の2.2)が、指定国の国内段階において異なる判断をすることは妨げられない»PCT規則3の2.(bPCT(5
 @国際予備審査を請求して答弁書を提出する
»国際出願法施行規則5条の2。この場合は、国際調査機関の見解書(否定的な見解のもの)は国際予備審査機関の最初の見解書とみなされ、国際段階である国際予備審査において反論の是非が判断されることになる。なお、このような答弁書の提出の機会があることは、国際調査機関の見解書において教示される»国際出願法施行規則0条の3第2項
 A国際予備審査を請求せずに国際事務局に非公式コメントを提出する。この場合は、国際段階において反論の是非が判断されることはなく、非公式コメントが国際事務局から指定官庁に送達されて指定国の国内段階において参酌されることになる。なお、非公式コメントは、PCTやPCT規則に規定されたものではなく、PCT同盟総会の決定によって設けられたものであり「Informal Comments」という表題を付すこと以外は自由に作成して国際段階においていつでも提出できる。

 補足4国際調査機関の見解が否定的なものであれば、次のように国際段階において明細書、請求の範囲、図面を補正することができる。なお、指定国の国内段階においても補正の機会は保証されている»PCT8条
 @国際調査報告の送付日から2月と優先日から6月のいずれか遅く満了する期間内に国際事務局に請求の範囲の補正書
と説明書を1回に限り提出する»PCT9条、PCT規則6.1〜6.5。この場合(いわゆる9条補正)は、その後に国際予備審査を請求して9条補正の考慮を希望しない限り、国際段階において補正の適否(新規事項の追加の有無)の判断や補正後の発明
新規性や進歩性の有無の判断がされることはない。なお、9条補正においては、明細書と図面の補正はできない。
 A国際予備審査を請求して手続補正書を提出する»
1条PCT(2(b。この場合(いわゆる条補正は、国際段階である国際予備審査において補正の適否(新規事項の追加の有無)の判断や補正後の発明の
新規性や進歩性の有無の判断がされることになる。なお、このような補正の機会があることは、国際調査機関の見解書において教示される»国際出願法施行規則0条の3第2項

(2.2)補充国際調査

 国際調査(いわゆる主国際調査)は出願人による請求を要さずに行われるものであるが、出願人は、さらに別の国際調査機関による国際調査(補充国際調査)を請求することができる。補充国際調査を管轄する国際調査機関(補充国際調査機関)は、すべての受理官庁に共通であるが、すべての国際調査機関が補充国際調査機関になっているわけではない(例えば、欧州特許庁、シンガポール知的財産庁、ロシア特許庁は補充国際調査機関になっているが、日本の特許庁、米国特許商標庁、中国特許庁、韓国特許庁は補充国際調査機関になっていない。補充国際調査の請求は、優先日から2月以内に補充国際調査機関(複数でも可)を指定して国際事務局に対して行わなければならず、国際出願が補充国際調査機関の認める言語によるものでなければ翻訳文が必要となる»PCT規則5の2.1。なお、補充国際調査機関の見解書は作成されない(規定がない