大阪地裁(令和元年12月16日)“光照射装置事件”は、「同法(サイト注:特許法)126条6項の規定は、訂正前の特許請求の範囲には含まれない発明が訂正後の特許請求の範囲に含まれることとなると、第三者にとって不測の不利益が生じるおそれがあるため、そうした事態が生じないことを担保する趣旨と解される。そうすると、『実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するもの』であるか否かの判断は、訂正の前後の特許請求の範囲の記載を基準として、訂正により第三者に不測の不利益を与えることになるかどうかの観点から決するのが相当である」、「本件再訂正発明に係る特許請求の範囲と本件訂正発明に係る特許請求の範囲の各記載を照らし合わせると、本件再訂正は、本件訂正発明の光照射装置が備えるLED基板について、本件訂正発明ではその枚数及び並び方向が特定されていないものから、枚数を『複数』のものに、並び方向を『ライン方向に沿って直列させてある』ものにするものである。このように、本件再訂正は、その形式上、請求項記載の発明の構成に更に構成を付加することにより特許請求の範囲を減縮するものであるところ、本件明細書は本件再訂正により何ら訂正されていないことを併せ考えると、本件再訂正発明の技術的範囲に本件訂正発明の技術的範囲を超える部分があるとは考え難い」、「本件訂正及び本件再訂正の経過を踏まえても、本件再訂正は、本件当初発明の技術的範囲から限定された本件訂正発明の技術的範囲を更に限定するものであり、本件再訂正発明の技術的範囲には、本件当初発明ないし本件訂正発明の技術的範囲を超える部分はないと認められる」、「以上より、本件再訂正は、第三者に不測の不利益を与える可能性はないから、『実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する』ものではない。したがって、本件再訂正は、特許法126条6項に違反するものとはいえない」と述べている。 |